FAIRUZ
BACK TO BAALBEK

若くして歌手としての才能を発揮し、高名なシンガーソングライターでラジオのディレクターも務めていたというハリム・エル・ルーミに見いだされると、当時の夫であった前衛作曲家アシ・エル・ラバーニと組み、伝統を打ち破る革新的なスタイルの作品を発表するようになったファイルーズ。その試みがひとつの頂点に達したと言えるのが1957年のバールベック国際音楽祭でのパフォーマンスだ。そこでファイルーズはローマ神殿の6本の円柱の中央で見事な歌を歌いあげ「7番目の柱」とまで激賞される。その勢いを持ってルーミ、ラバーニ、ファイルーズのトリオは1962年から76年にかけて、ミュージカル、オペレッタのための音楽を革新的な方法で世に問うていったのだ。本作に収められたのはそんなファイルーズがもっとも革新的だった時期の音楽たち。そのどれもがアラブ歌謡の古典とみなされており、"Bint el Chalabia "などは今の若い世代にも引き継がれ、日常的にくちずさまれているとのことだ。

ここ日本でも2011年に『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』と題されたCDがリリースされ、ワールドミュージック・ファンの話題を攫ったが、曲目こそ異なるもののレコード派にとって今回のリリースは朗報といえるだろう。

（参考音源）